「増築箇所は雨漏りしやすくなる」と聞いたことはありませんか?
その意見を参考にすると、なかなか増築に踏み切れなくなってしまいます。
しかし、増築は家族のライフプランの変更や成長に合わせて快適に暮らすため住宅の形状を変える効果的なリフォームです。
今回の記事では、増築箇所の雨漏りリスクや適切な対処法について詳しくまとめました。
マイホームの増築を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
増築箇所が雨漏りしやすい理由とは?
実際に、増築箇所から雨漏りが始まるケースは多いです。
増築箇所が雨漏りしやすい理由には、どのようなものがあるのでしょうか?
増築箇所の接合部分に問題がある
増築箇所の雨漏りの中でも最も雨漏りリスクが高まる部分は、既存の住宅と増築部分の接合部です。
既存箇所と増築箇所では使用される建材・構造が異なるケースが多く、接合が不十分になりやすいのです。
特に新旧の建物で屋根の勾配が変わる・屋根材が変わる接合部分は、雨漏りリスクが高くなると言えるでしょう。
また、工事をした時点で問題がない場合でも、地震や強風による影響で接合部に隙間やズレが生まれる可能性もあります。
なぜなら、既存の住宅部分と増築部分は地震・強風による揺れ方が違うためです。
雨水は、わずかな隙間からも住宅内に侵入します。
増築工事で既存の建物に悪い影響が出る
ある程度老朽化が進んだ建物に増築工事をすると、既存の建物に振動や衝撃が加わり、劣化を早める可能性があります。
例えば、屋根や外壁にひび割れが発生すれば、その隙間から雨漏りが始まってしまうでしょう。
また、増築により排水経路や屋根の形状が変わり、建物自体に問題はなくても排水が追いつかずに雨漏りが起こるケースも少なくありません。
増築箇所の防水処理の不備
増築部分の防水処理の不備により、雨水が住宅内に侵入するケースもあります。
防水処理には専門的な知識と高い技術が求められます。業者や職人の経験・技術が不足していると、雨漏りが起こりやすくなるのです。
増築工事で雨漏りが始まった時に実施するべき応急処置
増築による雨漏りはすぐに修繕が必要です。
しかし、多くの場合は雨が降っている当日中に作業をスタートすることが難しいでしょう。
応急処置をして、フローリング・家具・家電が濡れないようにしてください。
バケツで雨水を受け止める
天井から雨水が滴り落ちている場合には、バケツや洗面器を用意して雨水で床が濡れないようにします。
床まで水が染み込んでしまうと、より雨漏りの被害が拡大するでしょう。
水が跳ねる時には、バケツの中に雑巾やタオルを入れるか、床全体にブルーシートを敷くと良いです。
窓や壁からの雨水はタオルで拭き取る
窓や壁からじんわりと雨水が染み出している時には、タオルや雑巾を使ってこまめに雨水を拭き取ります。
可能であれば、吸水性が高いタオルなどを雨水箇所に固定してください。
壁の湿度が高くなると、電気ショートのリスクが上がってしまいます。
雨漏りの原因特定は専門家に依頼するべき
雨漏りの原因特定は非常に難しい上に、原因が分からないまま雨漏りを完璧に修繕することは不可能です。
雨漏りを直す前には、専門家に雨漏りの原因特定を依頼してください。
専門家は、次のような方法で雨漏りの原因を調べていきます。
1.現地調査をする
まず、雨漏りの被害がある住宅を訪れて雨漏りの状態を確認します。
住宅外部・内部の確認のみでなく、結露の可能性も考えた上で雨漏り調査を進めます。
現地調査の結果は、この後の分析に役立つでしょう。
2.情報を分析する
現地で得た情報を分析して、雨漏りの原因を探っていきます。
必要な場合は、建物の図面・過去の工事記録なども参考にしながら原因を考えます。
3.雨漏り検査をする
より詳細な原因を特定するために、専門的な機器を用いて検査を実施します。
現地調査で使われる機器は、住宅の構造や雨漏りの状況により異なります。
具体的には、以下のような調査方法を組み合わせるケースが多いでしょう。
調査方法 | 内容 |
---|---|
散水検査 | 実際に住宅の屋根から水をかけて雨水の侵入経路を探る |
コンピューター解析 | 雨水の流れをコンピューターでシミュレーションして水の動きを調べる |
赤外線カメラ | 赤外線カメラで湿気のある箇所を可視化して、水の侵入箇所を特定する |
4.原因の特定と修繕プランを提案する
雨漏りの原因が特定された後は、修繕プランの提案を受けます。
雨漏り修理も可能な業者であれば、原因特定と修繕の両方を任せられます。
雨漏り調査を依頼する時のポイント
雨漏りの調査を専門家に依頼する時には、以下のポイントを意識しておきましょう。
雨漏りの被害状況を記録しておく
口頭で被害の状況を説明するよりも、スマホのカメラを使って動画や写真を撮影した方が、雨漏り発生時の様子をより詳しく伝えられます。
突然雨漏りが発生した時には誰もが慌ててしまうのですが、被害状況を残すことを忘れないようにしてください。
質問リストを作成しておく
雨漏りについての質問や、伝えるべき情報に漏れがないように、事前に質問リストを作っておきましょう。
特に雨漏りの原因に直結するような情報は、現地調査時に伝えるべきです。
また、調査時に受けた説明は自分でメモしておくと良いでしょう。
自分で雨漏りの原因を探ろうとしない
雨漏りの原因には複数の要因が絡み合っているケースが多く、専門家でも簡単に原因特定ができないこともあります。
自分で雨漏りの原因を探そうと考え、屋根に登ったり屋根裏をチェックしたりすれば、雨漏りの被害を拡大してしまう可能性が考えられるのです。
雨漏りの原因調査は素人ができるものではないと考えてください。
増築箇所の雨漏り修理の方法の例
増築箇所の雨漏りに効果的な修繕方法は、雨漏りの状態や原因により異なります。
ここでは、代表的な修繕方法を2つ紹介しましょう。
ウレタン防水
ウレタン防水とは代表的な防水工事であり、液体状のウレタンを問題の箇所に塗布して防水層を形成します。
液状であるため、増築箇所のような複雑な形状にも施工可能です。
また、ウレタン防水は伸縮性に優れていることから建物の動きに追随でき、温度変化が激しい場所でも防水性能を維持します。
軽量で建物に負担をかける心配がない・メンテナンスしやすいというポイントも、ウレタン防水のメリットだと言えるでしょう。
屋根カバー工法
屋根カバー工法とは、既存の屋根を残した状態で新しい屋根を上から被せる工事です。
屋根カバー工法で既存の屋根の上に新しい屋根をのせれば、増築部分の雨漏りを解決できるだけでなく、屋根の色や素材が統一されて外観イメージがより良いものになるでしょう。
同時に雨樋の設置や軒先を作るなどの工事も実施することで、今後の雨漏りリスクを減らせます。
増築工事で雨漏りが起こらないようにするためのポイント
増築箇所は新旧の建物がつながる接続部分が生まれるため、雨漏りが起こりやすくなります。
増築工事の雨漏りリスクを減らすためには、次のようなポイントを意識するべきです。
施工前に既存の建物に劣化がないか確認する
既存の建物に劣化や損傷リスクが高い問題があると、増築工事が原因で状況が悪くなる可能性が考えられます。
特に建築後長い時間が経過している建物に増築工事をする時には、現在の建物の状態を調査した上で増築工事を検討してください。
雨漏りにつながりやすい箇所を特定・対策する
増築により排水経路が変わると、特定の箇所に雨水が集まることが原因で突然雨漏りが発生する可能性があります。
増築時には雨漏りリスクが高まる場所を把握し、十分な対策ができるようにしましょう。
プロに相談しながら、雨漏りリスクを探ることが大切です。
設計士とよく相談した上で増築計画を立てる
増築はリフォームの中でも難易度が高い工事です。
なぜなら、既存の建物と新しい建物をつなぐ接合部分は住宅により形状や対応を変える必要があり、屋根の勾配・排水計画なども入念に検討しなければいけないためです。
さらに、増築箇所を目立たせないために、一体感を持たせるデザインも検討する必要があります。
増築をする際には、建築士としっかり話し合いをしながら計画を進めてください。
慎重に使用する建材を選ぶ
増築による雨漏りを長期的に予防するためには、耐用年数が長い建材を選択するべきです。
初期費用は上がりますが、長期的なメンテナンスコストを考えてください。
特に屋根は経年劣化しやすい部分であり、一度の工事で必要になるメンテナンスコストも高額です。
信頼できる施工業者を探す
先ほどもお伝えしたように増築は難易度が高いリフォームであり、高い技術と経験を持つ施工業者に依頼しなければ、雨漏りリスクが上がってしまいます。
増築工事を依頼する施工業者選びのチェック項目
増築工事を依頼する施工業者を選ぶ時には、以下のポイントをチェックしましょう。
信頼できる業者を見つければ、安心して工事を任せられます。
- 増築リフォームの実績が多いか
- 増築後のトラブルに関して万全の保証が用意されているか
- 分かりやすい見積もりを作成してくれるか
- 親身に家族の希望に寄り添ってくれるか
増築後に雨漏りが発生した時には、保証の有無が重要になります。
増築時の施工会社選定では、増築箇所・既存の建物の保証が用意されているかという点を必ず確認するべきです。
増築が理由の雨漏りの保証については、次の章に詳しくまとめました。
増築が理由の雨漏りでは保証が使えるのか?
リフォームで増築をすると、リフォーム瑕疵保険が適用される・適用されない両方のケースがあります。
なぜなら、リフォーム瑕疵保険の内容は、対象範囲や保証範囲がリフォーム業者によって異なるためです。
増築部分が保証の対象外になる場合は、明らかに増築が原因の雨漏りであっても、保証を使えなくなってしまうでしょう。
増築を考えている時には、依頼先で用意している保障内容や対象範囲をよく確認してください。
保証がしっかり整っている業者であれば、万が一の雨漏り発生時に金銭的な損失を最小限に抑えられます。
増築のタイミングによる雨漏りの責任範囲の違い
増築のタイミングにより、雨漏り発生時の責任範囲が変わります。
増築を考えている方は、現段階での増築で雨漏りが発生した場合の責任の所在を把握しておきましょう。
新築直後の増築
新築後直後に増築をして雨漏りが発生した場合、新築部分には瑕疵担保責任が適用されます。
ただし、増築部分はリフォーム瑕疵保険または業者独自の保証が適用される・されない可能性があります。
築5年の増築
新築後5年が経過してから増築をする場合、新築部分にはまだ瑕疵担保責任が適用されます。増築部分の保証は新築後の増築のケースと同様です。
築20年の増築
建築後20年が経過した建物では、瑕疵担保責任は適用されません。
増築により発生した雨漏りが増築箇所である場合には、リフォーム瑕疵保険または業者独自の保証が適用される・されない可能性があるでしょう。
ただし、増築により既存の住宅で雨漏りが発生したケースでは、責任の判断が難しくなります。
増築による雨漏りでトラブルが起きた場合の対応
増築が原因の雨漏りで、業者の保証が使えないなどのトラブルが発生した時には、次のような対応をとりましょう。
自分だけが不利益を被らないように、可能な限りの対応を試してみるべきです。
- 住宅リフォーム紛争処理支援センターなど専門機関に相談する
- 加入済みの火災保険や損害保険で雨漏り被害をカバーできるか確認する
- 業者の対応に納得できない場合は裁判・調停という選択肢もある
ただし、裁判や調停で業者と決着をつけるためには、多くの費用と時間がかかります。
まずは専門家に相談して、効果的なアドバイスをもらいましょう。
まとめ
増築は難易度が高い工事であり、接合部分の防水処理の不備・隙間の発生などにより、雨漏りリスクが高くなります。
マイホームの増築を検討している方は、増築による雨漏りのリスクを理解した上で、信頼できる施工業者を見つけられるようにしましょう。
施工業者選びの時には、万が一増築後に雨漏りが発生した場合の保証についてしっかり確認することが大切です。
この記事を参考に、雨漏りのリスクを最小限に抑えられる増築工事を成功させてください。