「家を建てて10年が経ったけど、そろそろ屋根のメンテナンスを考えた方がいいのかな?」
「屋根塗装とカバー工法は、どちらを選べば良いのだろうか?」
屋根は住宅で最も過酷な環境にさらされる部分であり、定期的なメンテナンスが欠かせません。
しかし、いざリフォームを検討する際に、屋根塗装とカバー工法のどちらを選ぶべきか迷ってしまう方も多いでしょう。
本記事では、屋根塗装とカバー工法の基本的な内容から、それぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
この記事を読めば、あなたの住宅に最適な屋根リフォームの方法を判断できるようになるので、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
屋根塗装とは?
屋根塗装とは、既存の屋根材に塗料を塗り直すメンテナンス方法です。
主にスレート屋根やトタン屋根に対して実施され、屋根材を保護して、外観を回復させる効果があります。
屋根塗装を検討すべきタイミングは、屋根に以下のような劣化のサインが現れたときです。
- 色あせ
- 塗装のはがれ
- サビ
- コケやカビの繁殖
- チョーキング現象※
※チョーキング現象とは、紫外線や雨風により塗料が劣化することで、表面に白い粉状の物質が浮き出る現象です。
劣化症状を放置すると、屋根材の防水機能が低下してしまい、最終的には雨漏りの原因となる恐れがあります。
一般的に屋根塗装の耐用年数は10年程度とされており、前回の塗装から10年以上経過した場合は、予防的なメンテナンスとして再塗装を検討するようにしましょう。
カバー工法とは?
カバー工法とは、現在の屋根材を撤去することなく、その上に新しい屋根材を重ね張りする施工方法です。
「カバールーフ工法」や「重ね葺き」とも呼ばれています。
カバー工法では既存屋根の上に防水シートを敷いてから、ガルバリウム鋼板やエスジーエル鋼板など、軽量の金属屋根材を設置します。
葺き替え工事の場合、古い屋根材の撤去と廃材処理には多くの時間と費用が必要です。
また、2004年以前に製造されたスレート屋根材にはアスベストが含有されている可能性があり、屋根材の処分には高額な費用がかかる場合もあります。
カバー工法では、撤去・処分作業が不要となるため、工期の短縮と費用削減を同時に実現できるメリットがあります。
屋根塗装のメリット
ここでは屋根塗装のメリットについて、以下の2つを解説します。
- 費用を抑えられる
- 工事が比較的簡単
費用を抑えられる
屋根塗装のメリットとして、他のリフォーム方法と比較して初期費用を削減できる点が挙げられます。
既存の屋根材をそのまま活用しており、表面に塗料を塗るだけの作業となるため、新しい屋根材の購入費用や大掛かりな工事が不要です。
また、カバー工法や葺き替え工事のような複雑な施工手順がないため、人件費も抑えられるでしょう。
限られた予算の中で屋根のメンテナンスを実施したい場合は、塗装による補修を選ぶと良いでしょう。
工事が比較的簡単
屋根塗装は既存の屋根材をそのまま活用するため、工事内容が比較的シンプルで施工しやすいという特徴があります。
大型の建材や重機を使用しないため、作業中に屋根から重い材料が落下するといった事故リスクも最小限に抑えられるでしょう。
また、屋根材の撤去や切断作業がないため、工事中の騒音発生も少なく、近隣住民への迷惑をかける心配がありません。
静かな住宅街や密集地でも、周囲との関係を損なうことなく工事を進められます。
このような施工の簡易さにより、住みながらの工事が可能なため、日常生活への影響も最小限に留められるでしょう。
屋根塗装のデメリット
屋根塗装には以下のデメリットも存在します。
- 短期間で再メンテナンスが必要
- 屋根の劣化が補修できない
- 将来的にかかる費用が高くなる
短期間で再メンテナンスが必要
屋根塗装のデメリットは、他のリフォーム方法と比較して、より頻繁なメンテナンスが必要になる点です。
使用する塗料の種類にもよりますが、一般的には10年程度で塗膜の劣化が進行していき、再度塗装する必要があります。
カバー工法の耐用年数が約20年〜約30年であるため、約半分程度の期間でメンテナンスを実施しなければなりません。
また、屋根塗装は初期費用こそ抑えられるものの、将来的には複数回の工事費用と都度発生する付帯費用を考慮する必要があります。
頻繁なメンテナンス作業に対応できるかどうかも、塗装を選択する際の検討ポイントです。
屋根の劣化が補修できない
屋根塗装では、屋根材そのものの損傷や劣化を根本的に解決できないというデメリットがあります。
塗料はあくまで表面をコーティングする役割であり、すでに発生している屋根材のひび割れ・欠け・反り・下地の腐食などの構造的な問題は改善できません。
屋根材に深刻な損傷がある状態で塗装を行っても、塗膜の下で劣化が進行し続けるため、期待した耐用年数を確保できない恐れがあります。
屋根が劣化している状況では、カバー工法や葺き替え工事といった、より抜本的なリフォーム方法を検討する必要があるでしょう。
カバー工法のメリット
ここからは、カバー工法のメリットについて以下の5つを解説します。
- 断熱性・遮音性・防水性が上がる
- リフォーム費用が安くなる
- 騒音やホコリのトラブルが発生しにくい
- 工期が短い
- アスベストにも対応できる
断熱性・遮音性・防水性が上がる
カバー工法では既存の屋根の上に新しい屋根材を設置するため、屋根が二重構造になります。
この構造により、住宅の快適性が大幅に向上するでしょう。
二重構造の古い屋根材が断熱材の代わりをすることで、外気温の影響を受けにくくなります。
夏は涼しく、冬は暖かい室内環境が実現するため、冷暖房費の節約効果も期待できるでしょう。
また、二重構造によって、雨音や外部からの騒音も大幅に軽減されます。
さらに、新しい防水シートを設置するため、防水性能が飛躍的に向上し、雨漏りのリスクも軽減されるでしょう。
このようにカバー工法は、住環境の全体的な質向上につながるリフォーム方法です。
リフォーム費用が安くなる
カバー工法は、屋根の葺き替え工事と比較して大幅なコスト削減につながります。
葺き替え工事では、屋根材の解体・撤去作業、廃材の運搬・処分、下地補修などに多額の費用が必要でした。
しかし、カバー工法では既存屋根をそのまま活用するため、解体作業員の人件費や廃材処分費、運搬費などが削減できます。
このように、カバー工法は費用を削減したい方にとって最適なリフォーム方法と言えるでしょう。
騒音やホコリのトラブルが発生しにくい
カバー工法では既存の屋根材を撤去しないため、工事中の騒音やホコリの発生を抑えられます。
葺き替え工事では、古い屋根材を剥がす際や廃材を運び出す際、解体作業時に騒音が発生することで、近隣住民との騒音トラブルが起こる恐れがありました。
また、撤去作業に伴うホコリの飛散も問題となりがちでした。
カバー工法であれば、解体・撤去作業が不要となるため、騒音が出たりホコリが舞ったりする心配はありません。
周囲の住民に配慮しながら安心して施工できる点は、カバー工法の大きな魅力といえるでしょう。
工期が短い
カバー工法では既存屋根の撤去作業が不要なため、工期を大幅に短縮できます。
葺き替え工事では、屋根材の解体・撤去や廃材処理、下地補修などの工程に多くの時間を要しており、さらに解体時の雨水侵入を防ぐための養生作業も必要です。
その結果、一般的な住宅でも工事完了まで7日〜30日程度を要します。
一方、カバー工法では既存屋根の上に直接新しい屋根材を設置するため、複雑な解体工程を省略できます。
結果として、工事期間を5日〜14日程度まで短縮することが可能です。
工期を短縮させることで、天候に左右される期間も短くなり、工事スケジュールが安定するため、予定通りの完成が期待できるというメリットがあります。
アスベストにも対応できる
2004年以前に建築された住宅のスレート屋根材には、健康被害のリスクを持ったアスベストと呼ばれる成分が含まれている可能性があります。
現在、アスベストの使用は全面禁止されていますが、2004年以前に建設された建物の中には、アスベストが含まれているものも存在している状態です。
葺き替え工事でアスベストが含まれた屋根材を撤去する場合、特別な対策と専門的な処理が必要となるため、工事費用が大幅に増加してしまいます。
カバー工法であれば、アスベスト含有屋根材を解体・撤去することなく、そのまま封じ込める形で新しい屋根材を設置できます。
その結果、アスベストの飛散リスクを回避しながら、安全かつ経済的に屋根リフォームを実施できるでしょう。
カバー工法のデメリット
一方で、カバー工法にはデメリットも存在します。
具体的なデメリットは以下の4点です。
- 火災保険は適用できない可能性が高い
- 耐震性に影響が出る恐れがある
- 瓦屋根には対応できないことが多い
- 内部補修が必要な場合は施行できない
火災保険は適用できない可能性が高い
カバー工法の場合、火災保険の適用が難しい場合があります。
火災保険は基本的に、台風や大雨などの自然災害により損傷した箇所を、被災前の状態に修復させるための工事が補償対象となります。
しかし、カバー工法は既存の屋根に新しい屋根材を重ね張りする「改良・改修工事」の性質が強いため、保険金の対象外となってしまうケースがあるのです。
自然災害による屋根の損傷で保険の活用を検討している場合は、工事の前に必ず保険会社や代理店に確認して、適用可能な修理方法について相談するようにしましょう。
耐震性に影響が出る恐れがある
カバー工法により屋根が二重になることで、建物全体の重量が増加してしまい、耐震性に若干の影響を与える恐れがあります。
ただし、従来の日本瓦屋根(約60kg/㎡)と比較すると、カバー工法後の屋根(約23kg/㎡〜約26kg/㎡)の方がはるかに軽量です。
現代の住宅は適切な構造計算に基づいて建築されているため、大部分のケースでは問題となることは少ないとされています。
もし、築年数が古い建物や構造に不安がある場合は、事前に専門業者へ相談することをおすすめします。
瓦屋根には対応できないことが多い
カバー工法は基本的に平坦な屋根材の上に新しい屋根材を設置する工法のため、すべての屋根に適用できるわけではありません。
日本瓦のような立体的で凹凸のある屋根材の場合、表面が波型に形成されており、その上に平らな金属屋根材を適切に設置することは技術的に困難です。
また、瓦は元々重量があるため、さらに屋根材を重ねることで構造体への負担が大きくなる恐れもあります。
トタン屋根についてもカバー工法の施工は可能ですが、既存屋根材の劣化状況によっては、カバー工法で施工した後すぐに葺き替え工事が必要になる場合もあります。
このように、カバー工法は主にスレート屋根や平板な金属屋根に適した工法であり、屋根材の種類や形状によって適用できない場合があることを理解しておきましょう。
内部補修が必要な場合は施行できない
カバー工法は既存の屋根を土台として活用する工法のため、屋根の下地や内部に深刻な損傷がある場合は施工できません。
野地板の腐朽や垂木の損傷などが発生している状況では、その上に新しい屋根材を設置しても安全性を確保できず、むしろ危険な状態となってしまいます。
また、下地が劣化していると新しい屋根材を固定するためのビスや釘が効かず、適切な施工ができません。
このような場合は、まず下地の補修や交換が必要となるため、結果的には葺き替え工事を選択する必要があります。
カバー工法を検討する際は、事前に点検することで下地の状態を確認するようにしましょう。
屋根塗装が向いているケース
以下の条件に当てはまる場合は、屋根塗装がおすすめです。
屋根の状態が比較的良好で、築年数が浅く屋根材に大きな損傷がない場合は、塗装による機能回復で十分に対応できます。
軽い色あせやチョーキング現象程度であれば、塗装により外観と機能を効果的に回復させることが可能です。
また、他のリフォームよりも費用がかからないため、現在の予算に制約があり、初期費用を抑えながら屋根の保護と外観の回復を図りたい場合にも屋根塗装がおすすめです。
10年程度のサイクルによる定期的な塗り替えが面倒でなければ、塗装によるこまめなメンテナンスで屋根材の寿命を最大限に延ばすことも可能です。
ただし、劣化が進んでいる屋根の場合は、塗料の効果が薄くなるため注意しましょう。
さらに、遮熱塗料や断熱塗料などの高機能塗料を試したい方や、定期的に屋根の色を変えたい方にとっても、塗装は理想的なメンテナンス方法と言えるでしょう。
カバー工法が向いているケース
以下の条件に当てはまる場合は、カバー工法がおすすめです。
築20年以上が経過しており、屋根材だけでなく防水シートの劣化も進行している住宅では、塗装だけでは根本的な解決になりません。
カバー工法により機能向上を図ることで、長期間安心して住み続けられます。
また、今後20年間〜30年間住み続ける予定があり、トータルコストを抑えたい場合はカバー工法がおすすめです。
一度の工事で長期間のメンテナンスが不要となるため、結果的に優れたコストパフォーマンスを発揮するでしょう。
屋根材に撤去が必要ない程度のひび割れや欠けがある場合、カバー工法なら耐久性を大幅に向上させられます。
夏の暑さや冬の寒さ、雨音などが気になる方には、二重構造による断熱性・遮音性の向上効果が期待できるでしょう。
さらに、2004年以前に建築されたアスベストが含まれている可能性のある屋根材では、カバー工法が最適な解決策となります。
まとめ
ここまで、屋根塗装とカバー工法の概要やメリット・デメリットについて解説しました。
屋根塗装とカバー工法は、それぞれ異なる特徴とメリット・デメリットを持つリフォーム方法です。
最適な工法を選択するには、屋根の劣化状況や今後の居住予定期間、予算などを総合的に検討した上で、信頼できる専門業者に相談することをおすすめします。
信頼できる業者を選ぶ際は、複数の業者から見積もりを取り、施工実績や保証内容を十分に比較検討してください。
適切な屋根リフォームにより、大切な住まいを長期間にわたって守れるようにしましょう。