陸屋根は文字通り、ほとんど勾配がない平らな形状の屋根を指します。
シンプルなテイストの屋根を形にできる陸屋根ですが、「陸屋根は雨漏りしやすい」ということを聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?
そこでこの記事では、陸屋根についての詳しい情報と陸屋根の雨漏りリスクを下げる対策をご紹介します。
陸屋根の住宅を建築済み・検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
陸屋根とは?
陸屋根は平面またはほとんど勾配がないデザインの屋根のことで、「ろくやね」「りくやね」と読みます。
その他の屋根と比較して、シンプルかつ現代的なデザインの住宅に取り入れられるケースが多いです。
陸屋根以外の屋根の種類
陸屋根以外の代表的な屋根のデザインには、次のようなものがあります。
- 切妻屋根:本を開いて逆さまにしたような形状
- 寄棟屋根:中央にある大棟に四方の屋根をつなぐデザイン
- 片流れ屋根:一方向だけに傾斜をつけた屋根
- 入母屋屋根:寄棟屋根の上に切妻屋根を被せたような形状
屋根は形状により外観の印象・機能性が大きく異なります。
陸屋根の構造
陸屋根は床層・防水層・断熱層の3層で出来ています。
床層
陸屋根の基盤部分であり、コンクリート製が多いです。
防水層
建物内に雨水が侵入することを防ぎます。陸屋根の構造の中でも、非常に重要な部分です。
断熱層
太陽の熱や外気温が室内に与える影響を最小限にします。
断熱層の働きにより、冬暖かく夏涼しい室内環境が維持されます。
陸屋根は雨漏りしやすい?
「陸屋根は雨漏りしやすい」と言われることがあります。
その理由には、陸屋根の次のような特徴が影響を与えています。
傾斜がないため屋根表面が雨水にさらされる時間が長い
雨水は下へ流れますが、陸屋根は他の屋根と比較して傾斜が極端に少ないため、雨水が流れずに留まってしまいます。
その結果、屋根が長時間濡れた状態が続き、屋根表面の劣化が進行しやすくなるのです。
一般的な陸屋根は雨水を流す目的で緩やかな傾斜がついていることから、完全に雨水が流れないわけではありません。
ただし、その他の傾斜がある屋根と比較すると、陸屋根は水はけが悪いと言えるでしょう。
表面が屋根材でカバーされず防水層のみで保護されている
陸屋根は他の屋根とは異なり、屋根材で屋根の表面をカバーしません。
陸屋根の表面は、防水効果を持つ塗装またはシートを活用する防水層によって保護されます。
屋根材で保護された屋根も屋根材の経年劣化により雨漏りリスクが高まりますが、陸屋根は他の屋根と比較して特殊な作りをしていると考えるべきでしょう。
陸屋根のメリット
陸屋根には次のようなメリットがあります。
雨漏りが心配で陸屋根を選ぼうか迷っているという方は、陸屋根のメリットも知っておいてください。
メンテナンス・掃除がしやすい
陸屋根は他の屋根のような傾斜がないことから、掃除やメンテナンスがしやすいというメリットがあります。
通常の屋根のメンテナンスには足場が必要ですが、陸屋根の場合は自分で簡単なメンテナンスができるでしょう。
また、屋根を掃除して普段から綺麗な状態にしておけば、屋根の劣化スピードを遅らせることができます。
屋上として活用できる
陸屋根は傾斜がないことから、屋根の上をバルコニー・屋上として活用できます。
洗濯物干し場・家庭菜園・ガーデニングなどのスペースになるだけでなく、太陽光発電システムを設置することも可能です。
他の屋根では活用できない屋根の上のスペースを使えるようになると考えてください。
住居スペースが広くなる
傾斜のある屋根は屋根裏などのデッドスペースができてしまいますが、陸屋根は屋根裏がない分、高い天井高を維持できます。
そのため、部屋が広く見える・開放感が出るなどの効果が得られるでしょう。
陸屋根のデメリット
陸屋根の導入を考えている方は、陸屋根のメリットとデメリットの両方を把握しておいてください。
比較的雨漏りのリスクが高い
先ほどもお伝えしたように、陸屋根はその特徴から比較的雨漏りのリスクが高くなります。
ただし、しっかりとした防水処理・適切なメンテナンスをすることで、雨漏りリスクを大幅に低くできると考えてください。
屋根裏スペースが確保できない
陸屋根には屋根裏スペースがないという点は、メリットでありデメリットにもなります。
屋根裏をロフトや収納として確保したいと考えている方は、他の形状の屋根を選ぶべきでしょう。
最上階が暑くなりやすい
陸屋根の住宅は、屋根と天井の間に屋根裏のような空間がないため、最上階は太陽熱や外気温の影響を受けやすくなります。
ただし、使用する断熱材や建物の構造により、この問題をカバーできるケースが多いでしょう。
陸屋根が雨漏りする代表的な原因
陸屋根が雨漏りする原因は主に、3種類に分けられます。
- 防水層の破損
- 劣化・排水溝の詰まり
- パラペットの破損や劣化の
防水層の破損・劣化
陸屋根の雨漏りで最も多い原因は、防水層の劣化です。
陸屋根は屋根材ではなく防水層で守られているため、防水層が破損・劣化すると雨水の侵入を防げなくなってしまうのです。
排水溝の詰まり
陸屋根に降った雨水は緩やかな傾斜を活用して流れ、排水溝(ドレン)から排水されます。
この排水溝に枯葉やゴミなどが詰まってしまうと、雨水が流れずに屋根が長時間濡れたままの状態になってしまうでしょう。
パラペットの破損・劣化
パラペットとは、バルコニーや屋上を囲むように設置される低い壁のことを指します。
パラペットは紫外線や雨水の影響で劣化しやすく、破損・劣化により雨水を防げなくなります。
陸屋根の雨漏りを防止するためには、パラペットも定期的にチェックしなければいけません。
陸屋根の雨漏りの原因になる防水層の劣化サイン
陸屋根の代表的な雨漏りの原因である防水層の劣化は、気がつかないうちに進んでいるものです。
ここでは、陸屋根の防水層が劣化している時に表れるサインについて説明します。
防水層の亀裂
地震を含む建物の揺れや下地処理の問題で防水層に亀裂が入ってしまった状態です。
隙間から雨水が入り込みます。
防水層の膨れ
すでに雨水が浸透して防水層が膨れています。
現段階では室内への影響が出ていない場合でも、すでに雨漏りが起こっている状態だと考えてください。
防水シートの剥がれ
防水シートの結合部分や排水溝部分は剥がれやすく、隙間から雨水が侵入するリスクがあります。
防水層が剥がれて浮いている状態である場合は、すぐに対処が必要です。
防水シートの破れ
経年劣化により防水シートが弾力性を失うと、破れたりひび割れたりする可能性が上がります。
防水シートは劣化の他に、飛散物のせいで破損することもあるでしょう。
植物による防水層の破壊
風などで飛ばされてきた種により、排水溝付近に植物が生えてしまうことがあります。
植物の根は防水層を突き破り、建物内部に雨水を運んでしまうでしょう。
すでに陸屋根に植物が生えてしまった場合は、素人判断で抜かないように注意してください。
陸屋根の雨漏りを防ぐケア
陸屋根の雨漏りを防ぐためには、普段から自分で屋根の掃除をすると良いです。
排水溝に枯葉やゴミが溜まらないようにしてください。
特に台風などの強風により、大きなゴミが飛んでくる可能性があります。
また、自然災害に見舞われた後には、屋根に異常がないかチェックするべきです。
防水層が破損・劣化した時の補修方法
防水層が破損・劣化してしまった時には、部分補修または防水工事で対応します。
防水層の状況に合わせて適切な工事が選べるようにしましょう。
部分補修防水工事をする
防水層の一部に破損・劣化がある場合には、該当部分のみの防水層を切除した上で新たに防水塗膜を塗布します。
防水層がシートの場合には、パッチ処理が効果的です。
ただし、防水層全体が劣化している時には、防水層の一部を補修してもすぐに他の問題が起こってしまう可能性があります。
劣化が進んだ防水層に部分補修をすることは、一時的な応急処置だと考えるべきです。
新たな防水工事をする
防水層が全体的に劣化している・防水層の耐用年数が過ぎている状態で雨漏りの兆候または雨漏りが見つかった時には、防水層を作り直す防水工事を行うべきです。
防水工事の種類については、次の章を参考にしてください。
防水工事の種類
防水工事にはいくつもの種類があり、それぞれメリット・デメリットが存在します。
この章を参考に、自宅に適した防水工事は何か考えてみましょう。
シート防水
シート防水とは、防水性能があるシートを陸屋根に貼り付けていく防水工事を指します。
防水シートは耐久性高いため長期間防水機能を維持可能なものの、シートとシートの繋ぎ目から雨漏りが発生しやすいという注意点があります。
このような理由から、シート防水の施工には高い技術が求められます。
塩化ビニル製・ゴム製の2種類のシートがあり、現在では耐久性が高い塩化ビニル製が一般的に用いられています。
- 耐用年数:10年〜20年
- メリット:工期が短く経済的・メンテナンスが不要なケースもある
- デメリット:高い施工技術が必要・凹凸がある屋根には向かない
ウレタン防水
液体状のウレタン樹脂を塗装で塗り重ねて防水層を作ります。
手頃な価格で施工できるだけでなく、複雑な形状の屋根にも対応可能です。
しかし、防水工事の中では比較的耐久性が低く、定期的に防水層を保護するトップコートを塗り替える必要があります。
メンテナンスコストも考えた上で、ウレタン防水を検討するべきでしょう。
- 耐用年数:10年〜14年
- メリット:手頃な価格で施工できる・既存の防水層を撤去しなくて良い
- デメリット:5年おきにトップコートを塗り替える・施工に時間がかかる
FRP防水
FRP防水では、繊維強化プラスチックを使用して防水層を形成します。
軽量でいて高い防水性を確保できる防水工事であり、屋外駐車場の床面にも採用されています。
屋上を家庭菜園やガーデニングなどに使う予定がある方に、おすすめの防水工事だと言えるでしょう。
ただし、FRP防水を施した陸屋根の劣化が内部まで進行した場合は、防水層を取り除いてメンテナンスをする必要があるため、多くのコストがかかります。
- 耐用年数:12年〜20年
- メリット:耐用年数が長い・施工期間が短い
- デメリット:施工価格が高い・衝撃でひびが入りやすい
アスファルト防水
アスファルト防水は強度が高い防水工事です。
優れた防水性や耐久性を持つものの重要があることから、一般住宅ではなくビルなどの屋上に採用されています。
- 耐用年数:13〜20年
- メリット:耐用年数が長い・防水性能が高い
- デメリット:施工価格が高い・建物によっては施工できない
陸屋根の雨漏り調査・防水工事にかかる費用相場
ここでは、陸屋根の防水工事をする際にかかる費用の相場をご紹介します。
防水工事の方法を考える時には、施工費用とメンテナンスコストの両方を把握しておきましょう。
陸屋根の雨漏り調査の費用相場
陸屋根に雨漏りの兆候がある・雨漏りが心配だという方は、まず雨漏り調査を依頼すると良いです。
雨漏り調査は種類により必要な費用が異なります。
雨漏り調査の種類 | 費用 |
---|---|
目視調査 | 無料〜 |
散水調査 (住宅に散水して調査する) | 3万円〜15万円 |
赤外線カメラ調査 (赤外線カメラで温度差を観察する) | 18万円〜30万円 |
ガス調査 (雨漏り箇所からガスを注入して雨の侵入箇所を確認する) | 18万円万円〜 |
雨漏り調査に必要な費用は最大でも30万円程度だと考えておいてください。
陸屋根の防水工事の費用相場
防水工事に必要な費用は住宅の大きさにより異なります。
また、工事費用が高くなるほど耐久年数が長くなると考えて良いでしょう。
防水工事の種類 | 1平方メートルあたりの費用 |
---|---|
シート防水 | 2,500円〜7,500円 |
ウレタン防水 | 4,000円〜7,000円 |
FRP防水 | 5,500円〜8,500円 |
アスファルト防水 | 5,000円〜8,000円 |
陸屋根の雨漏り修理にかかる費用を抑えるコツ
陸屋根の雨漏り修理にかかる費用を抑えたいと考えている方は、次の取り組みを心がけてください。
定期的にメンテナンスをしておく
防水層やパラペットの破損が一部分である状態ですぐに補修をする・トップコートを塗り直すなどのメンテナンスを定期的に実施することで、雨漏りの被害を最小限に抑えたり雨漏り自体を防いだりする効果が期待できます。
陸屋根は雨漏りしやすい屋根であると考え、定期的なメンテナンスを忘れないようにしてください。
自分でできるケアを怠らない
排水溝の掃除や屋根の劣化状況の確認など、日頃から屋根を良い状態に保つ努力をしていると、屋根の劣化を遅らせる効果が得られます。
また、屋根の劣化や損傷にもいち早く気がつけるでしょう。
自分でできるケアを怠らないようにすることが大切です。
火災保険を活用して雨漏り修理をする
自然災害が原因で陸屋根が破損し雨漏りにつながった場合には、雨漏り修理に火災保険が使えます。
火災保険の契約内容により異なるため、保険会社に確認してみましょう。
火災保険の対象になる雨漏りの原因の例は、以下を参考にしてください。
- 台風や暴風による屋根の破損
- 大雪やひょうによる屋根の破損
また、火災保険の内容によっては、雨漏りによる家電製品や家具の被害も保証されるでしょう。
補助金や助成金を活用する
大規模な防水工事には多くの費用がかかります。
お住まいの地方自治体で防水工事のリフォームに関する補助金・助成金が用意されている場合には、積極的に活用するべきでしょう。
ただし、補助金・助成金を受けるためには一定の条件があります。
詳しくは各自治体に問い合わせてみてください。
陸屋根の雨漏り修理はDIYできるのか?
屋根の雨漏り修理には専門のテクニックや知識が必要であるため、DIYで直すことはおすすめできません。
場合によっては、より被害を拡大させてしまうリスクが存在するでしょう。
ただし、すぐに修理業者の予約が取れない時には、自分で応急処置をすると良いです。
特に陸屋根を屋上やベランダとして活用している場合には、安全に雨漏りの応急処置ができるでしょう。
具体的には、雨漏り部分をブルーシートで覆い、土嚢袋を活用して固定します。
ブルーシートを置く応急処置であれば、自分で陸屋根を傷つけてしまう心配がありません。
陸屋根の雨漏り修理を依頼する業者選びのポイント
陸屋根の雨漏り修理を業者に依頼する際には、以下のポイントを意識してください。
信頼できる業者が見つかれば、安心して防水工事を任せられます。
複数の業者で相見積もりをとる
陸屋根の雨漏り修理を依頼する際には、複数の業者から相見積もりを集めます。
雨漏り修理の施工内容や費用は業者ごとに異なるため、いくつもの見積もりを比較検討しましょう。
また、細かく項目ごとの費用が明記されている業者を選べば、必要な費用の内訳を把握しやすくなるでしょう。
見積もりをもらう時には、追加料金が発生する可能性について確認しておいてください。
実際に業者を使った方の口コミを確認する
インターネットや口コミサイトを活用して、検討中の業者で雨漏り修理をした方の口コミをチェックします。
この際、良い口コミだけでなく悪い口コミも目を通すようにしてください。
担当者との相性もありますが、複数の口コミを読むことで業者の質が分かってくるでしょう。
業者の公式サイトのみを確認すると、良い口コミしか掲載されていない可能性があるため、注意してください。
誠実な対応をしてくれる業者を見つける
契約を急かしたり脅したりするような説明をする業者は避け、誠実な対応をしてくれる業者を探します。
雨漏り修理は雨漏りの被害が拡大する前にいち早く実施するべきですが、悪質な業者を選べば期待する仕上がりにならず、施工不良が起こる可能性もあります。
効率良く業者選びを進め、安心して工事を任せられる業者を見つけてください。
まとめ
陸屋根は他の屋根と比較して雨漏りしやすい屋根であると言えますが、適切なケアとメンテナンスをすればデメリットをカバーできます。
陸屋根のメリットには屋上を使える・天井が高くなるなどさまざまなものがあるため、陸屋根の魅力も知っておくべきです。
この記事を参考に正しいお手入れを続ければ、陸屋根でも雨漏りの心配をせずに過ごせるでしょう。