建物にとって、一度雨漏りが発生すると漏電の危険性が増加するので避けて通りたい問題のひとつです。
実際に雨漏りが発生した際に、漏電のリスクを回避する方法などを事前に把握しておくことで事故を回避することができます。
ここでは、雨漏りで漏電が発生する原因や、漏電が発生することで起こる症状、放置することでのリスクや応急処置方法などを紹介します。
雨漏りで漏電が発生してしまう原因
漏電とは、電気が余計な所に流れないように絶縁処理された配線や電気回路に電気が流れ込み、使用している電気設備や電化製品を故障させたり、動作異常を起こしたりすることを指します。
雨漏りが発生すると、この漏電が発生しやすい状態になりますが、実際にどのような原因で起こるのでしょうか。
建物の経年劣化に伴う漏電
雨漏りは、建物のさまざまな箇所から発生する可能性があります。
経年劣化により、建物にヒビが入ったり防水加工を施すコーキングなどが剥がれた箇所から建物内に雨水が侵入し、電気設備に触れることで損害を発生させます。
特にコンセントなどの直接電気系統を接続する箇所の水漏れには、十分に注意する必要があります。
電気設備の老朽化に伴う漏電
建物の老朽化と同様に電気設備が老朽化すると、配線関係を保護する絶縁体が損傷し電気が流れるコードが剥き出しになることがあります。
この部分に雨漏りで侵入した雨水が触れることで、漏電が発生する危険性が増します。
特に屋根裏などの場合には、電気系統を管理するブレーカーを設置していることが多く、ブレーカーに水が付着して錆を発生させ最終的に漏電を誘発する原因になります。
雨漏りで漏電が発生すると起こる症状
雨漏りで漏電が発生すると、症状として以下のようなことが発生します。
停電やブレーカーが頻繁に落ちる
停電やブレーカーが頻繁に落ちるようなことが多発した場合には、雨漏りで漏電していることが疑われます。
漏電が発生すると、電気回路を保護するために自動的にシステムがシャットダウンします。
漏電の損害が大きい場合には停電が発生し、軽度の場合にはブレーカーが度々落ちることが発生します。
また、漏電した場合には電気を使用していない箇所にも電気が流れることになるので、通常時よりも電気代の請求が高くなります。
急に電気代が跳ね上がるようなことが起きたら、漏電を疑いましょう。
雨の日に家電製品が不調になる
雨の日に限って電気のスイッチが効かない現象や、洗濯機などが作動しないなど家電製品が不調になる場合には、屋根裏や壁から雨漏りが発生して漏電を引き起こしている可能性があります。
家電製品が漏電することで、感電のリスクが増すことにも繋がるので注意が必要です。
雨の日に家電製品が原因不明で不調の際には、一度コンセントを抜いて雨漏りからの漏電が起こっていないかを確認しましょう。
照明器具から水が滴り落ちてくる
一旦天井で雨漏りが発生すると、配線を水が辿り照明部分まで濡れてしまうことになります。
そのために、照明器具から水が滴り落ちてきている場合には、天井に雨漏りが発生しているとともに、漏電を引き起こしている場合があります。
雨が降った際に、照明器具に水滴が付着している場合は漏電や雨漏りを疑いましょう。
漏電を放置することで発生するリスク
雨漏りが発生している際に、漏電が起きると次のようなリスクが発生します。
漏電による感電のリスク
漏電が発生しているということは、電気が水を通して広範囲に広がっていることを指します。
その場所に触れてしまうと、最悪の場合は人体に大きなダメージを与えることになるので命の危険があります。
一般的に家庭にある100Vの電圧に感電すると、皮膚が乾燥している場合は25mA、水に濡れている場合では50mAの電気が流れると言われます。
一度人体に電気が流れると、筋肉が痙攣して硬直して自由が効かない状態になります。
この現象で、更に通電時間が長くなり人体に大きな危険を起こします。
感電の症状
次のような感覚になったら要注意です。
漏電している電気の量 | 身体に感じる症状 |
---|---|
〜0.5mA | ほとんど無反応 |
1mA〜 | ピリピリとした感覚を感じる |
〜5mA | 苦痛に感じるほどビリビリとする |
10〜20mA | 筋肉の緊張や運動機能が麻痺して、耐え難い苦痛がある |
50mA〜 | 危険度が高く、心肺停止に至ることがある |
金属部分に触れた際に、ピリピリとした感触を感じたらすぐに専門の業者を呼んで調査を依頼しましょう。
漏電による火災発生のリスク
漏電が起こると、モルタルの下地などで使用しているラス網と呼ばれる金網などの金属が電気で発熱し、壁の内部にある木材やホコリに引火することがあります。
また、電気の供給口やコンセントなどの場所も、漏電により小さなスパークを引き起こすトラッキング現象などを誘発する場所なので注意が必要です。
一般の家庭では、分電盤に漏電遮断機がついていることが多く、上記のような漏電が発生するとアース線をアース端子に繋いでおくことで自動的に電気を外部に逃したり、システムを止めるなど抑制することができるので見直してみると良いでしょう。
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雨漏りの漏電に対処する応急処置方法
雨漏りが発生して、前述のような漏電の症状が確認された場合は次のような応急処置を行いましょう。
漏電箇所の確認
漏電が発生した際の応急処置としては、まず漏電箇所の特定が重要です。
細かな発生箇所が分からない場合は、雨漏りが発生している場所を注意深くチェックします。
屋根や壁など、電気配線が近い箇所が疑われるので確認できる範囲で調査しましょう。
雨漏り箇所を遮断する
雨漏りの箇所が明白で高所では無い場合には、防水シートやビニールシートを用いて雨水の流入を防ぎましょう。
一時的に雨水の流入を防ぐことで、漏電の箇所を最小限にすることが可能になります。
また、電化製品など移動できる場合は濡れない場所に移動させ、移動できない場合はシートを上から覆うと良いでしょう。
漏電箇所のブレーカーを落とす
漏電箇所がある程度見つけることができたら、漏電箇所のブレーカーを落として感電などのリスクを軽減しましょう。
漏電が発生すると感電や火災のリスクが生じるので、事前にブレーカーを落とすことで一時的に回避することができます。
漏電箇所が特定困難な場合には、無理して確認作業をおこなわずに家全体の電源を落とすことを検討しましょう。
電気保安協会及び地域管轄の電力会社に連絡
戸建て住宅で漏電が発生した際には、一般家庭や企業の電気設備の安全点検を行う「安全保安協会」や地域を管轄する「電力会社」に連絡しましょう。
電気保安協会に依頼した際の調査費用は、基本的に無料なので不安な場合は相談してみると良いでしょう。
また、マンションやアパートの場合には、電気保安協会や電力会に連絡するよりも先に管理会社や大家さんに連絡をしましょう。
ご自身の部屋だけではなく、共有部分や他の部屋からの漏電の場合には管理会社を通して修理依頼を行うことで、自己負担なく修理できる可能性があります。
漏電を発生させないための予防策
本来電気が流れる場所ではない箇所に、電気を流させないための予防策は次のようなものがあります。
建物のメンテナンスを定期的に行う
前述で解説したように、漏電の原因としては雨漏りから発生するケースが多くあります。
建物の老朽化に伴う屋根や壁の劣化、台風や竜巻により損傷した場所からも雨漏りは発生します。
一度雨漏りが発生すると自然に直ることはないので、定期的に専門の業者に依頼して雨漏りのチェックとメンテナンスを行いましょう。
コンセントの緩みを無くし周りに埃を溜めない
差し込み部分が緩んだコンセントは、埃が溜まりやすい状態になり、溜まった埃に結露などで水分が付着すると漏電し発火するトラッキング現象が発生する恐れがあります。
日頃頻繁に掃除をすることが少ない電化製品の裏側などで起こりやすい現象になるので、コンセントの緩みや埃が溜まっていないか定期的に確認する必要があります。
電気系統の配線トラブル
電化製品や照明関連の配線などは、経年劣化により絶縁体が損傷して中のコードが剥き出しになることがあります。
また天井裏などでは小動物がコードを噛み切り断線させたり、損傷させることもあります。
そのような状態で、雨水に濡れると漏電の原因になるので定期的に点検をする必要があります。
塩害による被害予防も必要
海岸近くに住んでいる方に関しては、塩分を含む水や風により通常より老朽化の速度が早くなる傾向にあります。
また、絶縁部分に塩分が付着すると電気を通しやすくなるので漏電の原因になります。
塩害に強い塗装などを利用して対策を施したり、通常よりも早く定期的にメンテナンス確認の必要があります。
漏電ブレーカーやアース線の設置
前述でも紹介したように、漏電ブレーカーやアース線の設置は漏電対策として有効です。
近年に建設されている一般的なご住居のほとんどに、漏電ブレーカーが設備されていますが、古い家屋や古民家には設置されていないケースもあります。
また、アース線を付けていないと漏電ブレーカーを設置しても反応しないので併せて取り付けられているか確認する必要があります。
アース線の設備があっても、正しく接続されていないケースもあるのでご自身でよく確認する必要があります。
アース線の取り付けができない場合には、専門の業者に取り付けをお願いすると安心です。
まとめ
雨漏りから漏電が発生する原因や、漏電が発生した際に起こる症状、放置することで発生するリスク、漏電が起こった時の対処方法について解説しました。
漏電の原因としては、経年劣化などにより雨漏りが発生することで発生するケースが多い傾向にあります。
漏電が発生すると、感電や火災など命が危険に晒されることもあります。
前述で紹介したような症状を感じたら、すぐに電気保安協会や地域管轄の電力会社に連絡することで対処してもらえます。
漏電を未然に防ぐためには、ご自身でできるケアと併せて専門家による住宅のメンテナンスも重要な対策のひとつになります。
雨漏りが発生したら放置するのではなく、一度専門の業者にメンテナンスの相談をしてみるのはいかがでしょうか。