セメント瓦とは?陶器瓦との違いや費用相場、施工の流れについて
セメント瓦とは1970年から1980年代にかけて最も使用されたセメントを主成分としている屋根材です。
最近はガルバリウム鋼鉄など他の屋根材が主流となり、使用されることは少なくなりましたが、現在もセメント瓦を設置している住宅は多くあります。
そこで、ここではセメント瓦の基礎知識や陶器瓦との違い、メンテナンスにかかる費用相場などを解説します。
セメント瓦について詳しく知りたい方、屋根リフォームを検討している方はぜひ参考にしてみてください。
Contents
セメント瓦とは
セメント瓦とは、セメントと砂を混ぜ合わせて作られた屋根材です。
耐久性・デザイン性が高く、価格も安いという理由で1970~1980年頃(高度経済成長期)によく使われていました。
しかし、現在はガルバリウム鋼鉄・スレートなどの他の屋根材が使われることが多く、新たに設置されることはほぼありません。
セメント瓦の種類
セメント瓦は色やデザインが豊富な屋根材です。
ここでは、セメント瓦の主なデザインを2種類紹介します。
平型 |
・平べったい形をした瓦 ・和洋どちらの建物にも似合う |
---|---|
S型 |
・波打ったようなS字型をした瓦 ・色が豊富 ・和風の建物に多いが、あえて洋風の住宅でも使用されていることがある |
セメント瓦と陶器瓦の違いは?
セメント瓦と陶器瓦は同じ瓦でも全く違う屋根材です。
ここでは、2つの瓦の違いを解説します。
項目 | セメント瓦 | 陶器瓦 |
---|---|---|
材質 | セメントと砂 | 粘土 |
見た目 | 表面がザラザラ | 表面がツルツル |
耐用年数 | 30~40年 | 50年以上 |
コスト | 安い | 高い |
材質
セメント瓦と陶器瓦は成分が違います。
セメント瓦はセメントと砂を混ぜ合わせた素材で、陶器瓦は粘土を成形して釉薬を塗った後に焼いた陶器製の素材です。
見た目
セメント瓦と陶器瓦は見た目にも違いがあります。
セメント瓦は表面がザラザラとしていて、和洋どちらの雰囲気にも合うシンプルな屋根材です。
陶器瓦は表面がツルツルとしていて、和風の雰囲気に合う屋根材です。
耐用年数
セメント瓦と陶器瓦は耐用年数にも差があります。
セメント瓦の耐用年数が30~40年、陶器瓦の耐用年数が50年以上です。
ただし、どちらもメンテナンスの有無や設置環境によって耐久性が変わるので、定期的な点検を受けるようにしましょう。
コスト
セメント瓦と陶器瓦を比べると陶器瓦の方が高い屋根材です。
ただし、陶器瓦は耐久性が高くメンテナンス費用もかからないので、長い目で見るとコストパフォーマンスが高いです。
セメント瓦の寿命
セメント瓦の寿命は30年~40年程度です。
ただし、この寿命はメンテナンスを定期的に行った場合に限ります。
10年に一度程度の頻度で塗装を行うと、機能性を維持できるのでおすすめです。
また、劣化症状が出た場合にはできるだけ早く対処しましょう。
セメント瓦の劣化症状
セメント瓦が劣化した時に現れる症状とその対処法を紹介します。
以下のような症状が現われた時は、業者に相談しましょう。
症状 | メンテナンス方法 |
---|---|
塗料の剥がれ | 業者による点検塗装工事 |
色褪せ | 業者による点検塗装工事 |
コケ、カビの発生 | 業者による点検塗装工事 |
瓦のズレ | 部分補修 |
瓦のヒビ割れ | 部分補修 |
雨漏り | 全体補修 |
塗料の剥がれ・色褪せ・コケ、カビの発生
塗料の剥がれ・色褪せ・コケ、カビの発生が起こったら、まずは業者に点検を依頼しましょう。
塗料の劣化が進んでいる場合は、塗装工事をするのがおすすめです。
この状態を放置しているとさらに劣化が進み、屋根が傷んでしまう可能性があるので早めに対処しましょう。
瓦のズレ・ヒビ割れ
瓦のズレ・ヒビ割れが起こった場合は、部分補修を行いましょう。
この症状を放っておくと、屋根下地まで傷んでしまって雨漏りなどのトラブルに発展してしまう可能性があります。
雨漏り
雨漏りが起こった場合は、屋根全体の補修工事をするのがおすすめです。
雨漏りが起こるということは屋根下地が傷んでいるということを意味しますが、この状態を放置しておくと屋根だけでなく家までダメージを与えてしまう可能性があります。
思い切って葺き替え工事をするのがおすすめです。
【工事の種類別】セメント瓦工事の費用相場と施工の流れ
ここではセメント瓦工事の費用相場と施工の流れを工事の種類別に紹介します。
3つのセメント瓦工事
- 塗装工事
- 部分補修
- 葺き替え
塗装工事
塗装工事とは、屋根材の塗装をする工事のことです。
セメント瓦のメンテナンスとして最も一般的な方法が塗装工事だと思っ良いでしょう。
セメント瓦は基本的に10年ごとに塗装工事を行うことが推奨されています。
費用相場 |
30~50万円(30坪戸建て) ※足場代含まない |
---|---|
施工の流れ |
①足場を設置する ②高圧洗浄機で洗浄する ③損傷部分を補修する ④塗装する ⑤縁切りをする ⑥仕上がりの確認をする ⑦足場を解体する |
対象となる症状 |
・瓦の色褪せ ・コケ、カビの発生 |
費用相場
費用相場は1㎡あたり2,000円~5,000円程度で、30坪一戸建てで換算すると30万円~50万円程度になります。
また、足場代など工事にかかる費用も必要です。
さらに、セメント瓦の塗装工事は屋根の面積・形状・塗料の種類によって費用が大きく変わるため、詳しくは業者に確認しましょう。
<塗料の費用目安>
塗料の種類 | 費用相場 | 耐用年数 |
---|---|---|
シリコン | 2,000/㎡~2,800円/㎡ | 10年~15年 |
ラジカル | 2,200/㎡~4,000円/㎡ | 15年~18年 |
フッ素 | 4,000/㎡~5000円/㎡ | 15年~20年 |
このように塗料は種類によって費用・耐用年数が変わることが分かります。
基本的に耐用年数が長い塗料ほど費用が高いという特徴があるので、メンテナンス費用などを考えると高い塗料を選択した方がお得になるかもしれません。
塗料の種類を選ぶ際にはメンテナンス費用も考慮して選ぶことが大切です。
施工の流れ
①足場を設置する
屋根工事は高所作業なので安全に行うために足場設置が必要です。
塗装工事は工事範囲が広いため、足場設置が必須の工事だと思っておきましょう。
②高圧洗浄機で洗浄する
足場の設置ができたら、まずは屋根に付着したホコリや汚れを高圧洗浄機で洗い流します。
③損傷部分を補修する
屋根に損傷がある場合は、損傷個所を補修していきます。
この作業にかかる日数は損傷個所の数や程度によって変わってきます。
④塗装する
補修が終わったらいよいよ塗装スタートです。
塗装は下塗り→中塗り→上塗りの順で複数回行っていきます。
乾燥させながら塗装を繰り返すので時間がかかることが多いです。
⑤縁切りをする
塗装が乾燥したら縁切りといって屋根材の間に詰まった塗料を削る作業を行います。
この作業を行うことによって水の流れが良くなり、雨漏りなどのトラブルを防ぐことができます。
⑥仕上がりの確認をする
縁切りができたら仕上がりです。
最後に確認をしましょう。
⑦足場を解体する
工事が終了したら足場を解体します。
このような流れで塗装工事を行います。
詳しい内容や工期、費用については屋根の劣化状況によっても変わるため、点検後でないと分からないことが多いです。
詳しくは見積もりの際に業者に確認しましょう。
部分補修(差し替え)
部分補修とは、屋根の一部分のみを補修する工事のことです。
屋根下地を含む屋根全体は傷んでいませんが、一部分のみを損傷している場合に行います。
セメント瓦の部分補修工事の中で主流なのは差し替え工事です。
費用相場 | 4,500円/㎡~ |
---|---|
施工の流れ |
①足場の設置 ②補修箇所の確認 ③損傷している瓦を取り外す ④下地の状態を確認する ⑤新しい瓦を取り付ける ⑥仕上がりを確認する ⑦足場の解体 |
対象となる症状 |
・瓦のズレ ・瓦の欠け ・瓦のヒビ割れ |
費用相場
セメント瓦の差し替え工事の費用相場は4,500円/㎡~です。
劣化がひどい場合、工事範囲が広い場合は足場代が必要になることがあります。
工事費用や追加費用については業者の方に確認しましょう。
施工の流れ
①足場の設置
部分補修の場合は、補修の程度によって足場を設置するどうかが変わります。
補修範囲が広い場合、損傷の程度が大きい場合は足場を設置することが多いです。
②補修箇所の確認
屋根の損傷個所を確認します。
③損傷している瓦を取り外す
損傷している部分の瓦を取り外していきます。
④下地の状態を確認する
セメント瓦を取り外したら下地の状態を確認します。
下地まで傷んでいる場合は、下地を補修していきます。
⑤新しいセメント瓦を取り付ける
下地の補修が終わったら新しいセメント瓦を設置します。
⑥仕上がりを確認する
新しいセメント瓦の設置が完了したら、仕上がりを確認します。
⑦足場の解体
工事が終了したら足場の解体です。
このような流れで差し替えを行います。
屋根下地まで傷んでいる場合、セメント瓦の耐用年数が過ぎている場合は葺き替え工事がおすすめです。
詳しくは業者と相談しましょう。
葺き替え
葺き替え工事とは古い屋根を取り払って新しい屋根材を取り付ける工事です。
現在新たにセメント瓦を設置することはほぼないので、セメント瓦を撤去したらセメント瓦とは違う屋根材を設置します。
費用相場 | 新しく設置する屋根材によって変わる |
---|---|
施工の流れ |
①足場の設置 ②既存の屋根の撤去 ③屋根下地の設置 ④屋根材の設置 ⑤仕上がりの確認 ⑥足場の解体 |
対象となる症状 |
・瓦のズレ ・下地のダメージ ・雨漏り |
新しく設置することが多い屋根材 |
・ガルバリウム鋼鉄 ・スレート ・アスファルトシングル |
費用相場
葺き替え工事の費用相場は新しく設置する屋根材によって変わります。
屋根材別の費用相場は以下の通りです。
新たに設置する屋根材 | 費用相場(100㎡あたり) | 耐用年数 |
---|---|---|
ガルバリウム鋼鉄 | 100万円~200万円 | 20年~30年 |
スレート | 90万円~190万円 | 20年~30年 |
アスファルトシングル | 100万円~200万円 | 15年~30年 |
このようにどのような屋根材を設置するかによって費用は変わります。
屋根材を選ぶ際には次のメンテナンスまでの期間やデザイン性、初期費用などからご自身の目的に合うものを選びましょう。
ただし、アスベストを含む場合は特別撤去費用が掛かります。
セメント瓦にはアスベストが含まれているものもあるため、特別撤去費用として2万円/㎡程度かかると思っておきましょう。
事前に業者の方に確認しておくと安心です。
施工の流れ
①足場の設置
葺き替え工事は大がかりな工事なので足場設置が必要です。
工事前に足場を設置していきます。
②既存の屋根の撤去
まずは古い屋根の解体・撤去を行います。
③屋根下地の設置
古い屋根の撤去が完了したら、防水シートなど屋根下地を設置します。
④屋根材の設置
屋根下地が設置できたら屋根材を取り付けます。
この時、どのような屋根材を設置するかによって工期が変わってくるので、業者の方に確認しましょう。
⑤仕上がりの確認
屋根材の設置が完了したら仕上がりの確認をします。
⑥足場の解体
工事が終わったら足場を解体していきます。
このような流れで葺き替え工事を行います。
葺き替え工事はどのような屋根材を設置するかによって費用や工期が変わるので、詳しくは業者に確認しましょう。
セメント瓦のメリット
ここでは、セメント瓦のメリットを紹介します。
セメント瓦3つのメリット
- 色・デザインが豊富
- 施工が簡単にできる
- 耐久性が高い
色・デザインが豊富
セメント瓦は色やデザインが豊富な屋根材なので、洋風・和風どちらの建物にも似合うものを選択できます。
住宅に雰囲気に合わせておしゃれな屋根に仕上げたいという方におすすめです。
施工が簡単にできる
セメント瓦は比較的施工が簡単な屋根材なので、施工を依頼できる業者が多いです。
施工を依頼できる業者が多いということは、急なトラブルが起こった際にもすぐに修理を依頼できるので安心です。
耐久性が高い
セメント瓦は耐久性が高い屋根材で、耐用年数も30年~40年と非常に長いです。
防水性・防火性などの機能性も優れているので、屋根材としてとても優秀です。
特に耐火性が他の屋根材と比べて高いので、火事でも燃え広がりにくいと言われています。
セメント瓦のデメリット
ここでは、セメント瓦のデメリットを紹介します。
メリットだけでなくデメリットもしっかりと理解していきましょう。
セメント瓦3つのデメリット
- 壊れやすい
- アスベストが含まれている可能性がある
- 定期的なメンテナンスが必要
壊れやすい
セメント瓦は硬さがある素材なので、衝撃に弱く割れやすいという特徴があります。
割れた状態のセメント瓦を放置しておくと屋根下地まで傷んで雨漏りを起こる可能性があるので、早めに補修を行いましょう。
台風や大雨の後は割れている可能性があるので、できる範囲で良いので、屋根の状態を確認しておくと安心です。
アスベストが含まれている可能性がある
古いセメント瓦にはアスベストが含まれている可能性があります。
アスベストは耐久性が高く価格も安いということから昔は建築部材によく使われていましたが、健康被害の可能性があるため2,000年代台中頃以降は使用が禁止されています。
お住いの住宅の屋根材にアスベストが含まれているかどうか心配という方は、一度業者に点検を依頼しましょう。
定期的なメンテナンスが必要
瓦の中には陶器瓦のようにメンテナンスが不要なものもありますが、セメント瓦はメンテナンスが必要なので注意しましょう。
メンテナンスをせずに使用すると耐用年数よりも早く劣化してしまう可能性が高いです。
10年ごとに塗装や補修を行いながら大切に使っていきましょう。
業者選びのポイント
セメント瓦工事をする際には業者選びが重要です。
どのような業者を選ぶかによって費用や工事の質が変わってきます。
ここでは、セメント瓦工事を依頼する業者選びのポイントを紹介します。
セメント瓦工事の業者選びポイント
- 実績を確認しよう
- 相見積もりをとろう
- コミュニケーションがとれる業者を選ぼう
実績を確認しよう
屋根リフォームを依頼する業者を選ぶ際には実績を確認しましょう。
実績数が多い業者は技術力が高いことが多いため、工事の仕上がりにも満足できることが多いです。
また、実績を開示している業者は信頼できる優良業者である可能性が高いです。
逆に、実績を開示していない業者、実績を聞いても教えてくれない業者は悪徳業者の可能性があるので注意しましょう。
相見積もりをとろう
屋根リフォームを依頼する業者を選ぶ際には、複数の業者で相見積もりを取りましょう。
相見積もりを取ることによって、複数の業者間で費用を比較し、適正な価格を知ることができます。
少し面倒かもしれませんが、少なくとも3社以上で見積もりを取ってから決めるようにしましょう。
コミュニケーションがとれる業者を選ぼう
屋根リフォームを依頼する業者を選ぶ際には、コミュニケーションが取りやすい業者を選びましょう。
屋根リフォームでは打ち合わせだけでなく工事期間中も話をする機会があります。
工事中に気になることがあった際に、すぐに質問できるかどうかも大切なポイントです。
工事を依頼する業者を選ぶ際には、コミュニケーションが取りやすい業者を選ぶようにしましょう。
仙臺屋根屋のセメント瓦工事施工実績
セメント瓦工事でよくあるご質問
- セメント瓦とは何ですか?
- セメント瓦は、ポルトランドセメント、砂、水などを混ぜて作られる建材です。耐久性が高く、防水性に優れており、屋根材として広く使用されています。
- セメント瓦の寿命はどれくらいですか?
- 適切なメンテナンスを行えば、セメント瓦は約30年から40年持つことが一般的です。
- セメント瓦のメンテナンス方法は?
- 定期的に屋根を清掃し、ひび割れや破損がないか確認します。必要に応じて、専門業者による修理や塗り替えが推奨されます。
- セメント瓦の設置コストはどのくらいですか?
- セメント瓦の設置コストはそのサイズ、施工業者、地域によって異なりますが、一般的に他の屋根材料に比べて高めです。
- セメント瓦を選ぶメリットは何ですか?
- セメント瓦は耐久性が高く、防音性、断熱性に優れており、長期間にわたって効果的な屋根材です。
- セメント瓦の色や形状のバリエーションは?
- セメント瓦は様々な色や形状で提供されており、建物の外観に合わせて選ぶことが可能です。
- セメント瓦の重量は問題になりますか?
- セメント瓦は比較的重いため、建物の構造がその重さを支えられるか事前に確認する必要があります。
- セメント瓦の耐候性はどうですか?
- セメント瓦は耐候性に優れており、厳しい気候条件下でも性能を維持します。
- セメント瓦の施工時に特別な注意が必要ですか?
- 正確な施工が必要で、屋根の傾斜、瓦の重ね方に注意し、適切な下地材料と防水処理が重要です。
- セメント瓦の交換は一枚ずつ可能ですか?
- はい、破損した瓦は周囲の瓦を傷つけることなく一枚ずつ交換することが可能です。ただし、専門の技術が必要です。
その他の屋根工事メニュー
この記事の監修者
菊地正秀
株式会社菊地板金工業 代表取締役
宮城県仙台市出身、屋根・外壁板金工事歴30年
18歳から建築工事にはじまり、屋根、外壁工事や水道、基礎工事と建設業の様々な分野で、幅広い知識と現場経験を習得。
建物の主要構造物となる『屋根』において金属板金を自由自在に施工する奥深さに魅力を感じ、25歳で屋根工事を専門とする一人親方として、独立。
平成23年に株式会社菊地板金工業を設立し、代表取締役に就任。現在に至る。
以上の経験をもとに、リフォームのトラブルを回避できる情報を、「失敗ゼロ!屋根・外壁工事研究会」として、皆様に発信している。